dynamic equilibrium
動的平衡(ダイナミック イクイリブリアム)という言葉がある
生物学の専門用語で、細胞は死ぬまでの間同じ姿を保ち続けるが、細胞を構成する分子たちは日々入れ替わっているということ
いや、細胞を構成する分子は日々入れ替わるのに、細胞は死ぬまで同じ姿を保ち続ける
と言った方が良いだろう
漢字熟語には名詞を単に連結させたものが多いが、その中に因果や逆説、所有、時間経過というものが潜んでいることが多い ほら、今も
故に翻訳の際は日本人は常に、英語で言うところの接続詞に悩まされる
これは余談だ
動的平衡という言葉を知ったのは中3の夏
理科の先生が僕に福岡伸一「生物と無生物のあいだ」という本をくれた
僕は一連の操作や論理もしくは教科書の単語などを覚えるのは得意だが、具体的なイラストやエピソードを思えるのは苦手だ
それなのに、職員室の入り口から見て2番目の長机の右側後ろから2番目の椅子に座った先生が机の上の本棚から僕にその本をくれたのは覚えている
その時は特に何も思わなかった
21年近く生きて感じたこと、人の記憶とは未来の自分と紐づけられている
今の僕はあんなに頑張った部活や中学の運動会の事を塵にも覚えていない
多分今の僕とはhave nothing to do withなのだろう、たとえ当時は胸が熱くなる思いがしたのだとしても
本を貰った段では特に何も思わなかった、でも今の僕の糧だから覚えている
時間がたってからふと、今までには一度も思い出したこともないようなことを思い出す瞬間が誰にでもある
その時に僕はあ、このこと思い出したの初めてだな、と思うのだが読者の方はいかがだろう
それは伏線回収のスイッチオン
Aという直線(X軸を想定してほしい)から離れていく歩み(正の傾きを想定してほしい)をした自分が
180度ではないまでも、少し回転して方向を変える(負の傾きを想定してほしい)
そして再びAに接触するとき彼の出来事が起こる
この接触点のことを数理科学では共有点と呼び、心理学では表象と呼ぶ
表象という言葉をググってみてほしい
なかなかにロマンではなかろうか
僕が動的平衡という言葉や、先生が僕に本をくれるシーンを始めて思い出したのは高3の夏だ
受験勉強と学校行事で忙しい中、刺激が多くてもバランスを保つ自分を、ふと客観視する自分が現れて、思い出した
また、さっきにも思い出した
最近は少し忙しい
眠くなってしまった
とりあえず今日はここで終わり
(つづく)